第9章 讃えられる寂しさ
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「────そもそもがだ。 あの子供は三歳か? とすれば四年前なんて、19の俺はカレッジで英国に居るだろう。 留学中の学生が、なんの用で渡米なんぞするんだ」
憮然として説明する静の前には、不思議顔で座っている透子と三田村がいた。
意識を取り戻した西条は部屋のすみで美和から応急処置を受けている。
「イタタ…そりゃあ、たまにはああいう女性相手も悪くないけど、プレイとしてはハード過ぎるよね………Rubatorってきみ知ってる?」
「知りマセーん!」
西条はストライクゾーンが広いらしい。
一方、美和は清々しく西条の発言をスルーしていた。
そんな彼らを他所に、桜木がエマに向け、ためらいがちにタブレットのディスプレイを掲げる。
「とすると、やはりこの男性ですわね?」
そこに映っているのは初老の男性のだった。
上品な面立ちだが、風格がありどこか近寄り難そうな。
「ああ、そう。 そうだよ。 京吾だ」
事態が呑み込めなく透子が静の方を伺うと、うんざりした表情で「それは俺の父親だ」と呟いた。