第8章 満天の夜に
「────ト……」
いつの間に日が暮れたのか。
「…あ………」
室内に重く沈む夜のとばりが時の経過を思い出させる。
自分はどうやら床で寝入ってしまっていたらしい。
寝ぼけまなこをこすりかけた透子が、頬にピリッとした刺激を感じた。
「っツ」
明かりをつけ、ズキズキする顔を鏡で見てみると、腫れてはいても血は止まっていたようだった。
目も腫れぼったく、酷い顔をしている自分が映っていた。
「………」
そんなものを見たくなく、早々に透子がそこから離れる。
今さら何のためと思うも机の上に置いてある、プリントアウトしていたOJTの書類を手に取った。
何かしていなければ余計に滅入ってしまいそうだった。
その時に。
シュッ…と、静の姿が視界の隅に垣間見えたような気がした。
丁度ベランダのある、窓の方向だった。
とうとう幻視でも見たのだろうか、と視線を戻す直前に、もう一度。
「………?」
ここは二階だし………?
それでもそろそろカーテンを閉めなければ。 あと、傷と頭も冷やしたかった所だし。
そう思いカララ……とベランダの戸を開け、夜間の冴えた寒さに身を縮こませた。
「子」
「────ヒッ!?」