第7章 閑話 百花繚乱*
床が頭に付きそうなほどのこれを、世間では土下座という。
「ひえっ」と、自分から変な声が出た。
「やややや止めて下さい!! 大げさ過ぎます!」
「しかしキミも以前に、これは人として当然のことだと。 そして出来ればあの時のキミの痛みの理由を聞かせてくれないか? 同じ過ちはしたくない。 今後触れるなと言われれば、その通りに。 かなり辛いが………」
「いちいち土下座はしませんし、なんでそんなに極端なんですか!」
自分のことは置いておいても、放っておけないと言った桜木の気持ちがよく分かる。 透子が静と向かい合わせに座った。
「三田村さんがいわゆる………レ…暴行などの行為には、恐怖、嫌悪、恥辱を感じ、自尊心が傷付けられるものだと言いました」
静の顔がサッと曇りかけ、透子は話の続きを急いだ。
「その気持ちは確かに理解出来るんです。 ですが私が静さんに感じたのとは違います。 なんというか────私はとても、寂しかったんです」
「寂しい?」
「あの時。 そこには私の気持ちがありませんでしたから………心無くとも、静さんはああいうことが出来るのかと。 そしたらそれは私じゃなくっても、良いんじゃないかって」
「透子それは違う、誤解だ」
足を崩し、当時を思い起こそうと静が目線を上に逃がす。