第9章 きゅう
松田 side
「っ」
「え?マジで言ってる?」
「…」
「な…、まじかよ。そう言う話じゃなかったのか?無自覚かよ?え?てか、付き合うところまで行ったよな?」
「そ、それは、ヒロの代わりっていうか。もちろん好きだけど、そういう意味ではなかったと言うか。ハニートラップとか、そう言うのも学んできたし、活かせるんじゃないかって」
…馬鹿、なのか?
首席とはいえ、ポンコツが過ぎる。
「ヒロのことがあってから、俺がと距離取ってたこと知ってるだろ。
その間にお前らからも様子聞いたりして、…でも、もう俺らも30になるし、そろそろ立ち直らせないとって思ってたんだよ。
ただそれだけだったのに、…」
「ゼロ、無自覚かもしれないがな。
お前はずっと、そう言う目でのこと見てたぞ。
ヒロが気づいてたかは謎だけど、初めて6人で遊んだ日あったろ?そん時にはもう、目で追ってたぜ?」
「なっ、俺はのこと、友愛と思っていて」
あわあわし出すゼロに呆れる。
そんなことあるかよ、あんなに熱い視線向けといて。
やっと本気になると思ったから、なんだかんだあの日2人がくっつくことを許したのに。
いや、ゆるすってまぁ別に俺に許可なんてとらなくても、2人の自由ではあるんだけれども。
「お前、ポンコツすぎね?」
「…」
「おーい、ぜろ?」
だめだ、ついにショートしちまいやがった。
「俺にはエレーナ先生がいたし」
「誰だよ」
「はぁ…」
「浸るな、俺もいるぞ?」
「はぁ…」
「まぁ、なんだ?のことは、一回は拒絶されたかもしんねぇーけどよ?挽回すればいーじゃねぇか。…それこそ、生きてるんだし」
「無理だよ、もう無理なんだ」
そっと目に腕を被せたのを横目で見る。
「ヒロを見ている目と同じだった。
あいつがヒロに似てるんじゃない、がヒロに対する気持ちと似ているものを…同じものをあいつに向けてるんだ」
「話が見えねぇ」
「件の、谷原って奴だよ」
「は?!」
「あんなチャラんぽらんそうな男より、俺の方が」
「どんまい、ゼロ。まぁ、悪い奴には思えなかったけどな」
「お前まで」
「萩が懐くくらいだしよ」
「松田ならともかく、萩は誰にでも行くだろ。表面上だけなら」