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ナターシャ

第1章 退屈な生活を終わらせたい


私は至って普通よとナターシャは思っていた。なぜ皆んなは決まったレールに沿った人生を歩くのか?そう思わずにはいられなかった。

そしてこの孤児院で何年も過ごしてきた。物心ついた頃には既に孤児院にいたのだ。彼女にとってはシスターが母親代わりだと思っていたけど父親のような存在はいないと思っていた。

この孤児院は退屈だけど窮屈ではなかった。お陰で1人で本を読むのも慣れたし、1人でぼぉっと外を眺めるのも慣れた。

そんな彼女は時々、鼻歌を歌うことがあった。どこかで聞いたことのあるような懐かしいようなメロディーがふと出てくることがある。けど、どこから聞いたのかは覚えていない。

そんな日々を過ごしていたある日のことだった。

「まさか、いえ・・・いいんですけどね。本当ですか?」
ナターシャが2階の階段を駆け降りた時にシスターが誰かと話しているのが聞こえた。

"あの人は誰?"
ナターシャは階段の手すりの間からその人を見た。
綺麗な格好をした夫婦のようだった。そこにシスターが驚きつつもにこやかに話しかけている。
"何の話をしているの?"

「ええ、まぁ。ただあの子は風変わりと言いますか・・・だいぶ変わってるんですけどそれでもよろしければ・・・。」
シスターは怪訝そうな顔つきに変わった。

"あの子って誰のこと?"
ナターシャは息を潜めた。

「はぁ、では早速呼びましょうか?まずお子さんを引き取るには1時間〜2時間くらいこの孤児院で触れ合ってもらってからですわ。子供達の中には悲しみを抱えていた子もいますからまずは触れ合って慣れてもらうことが大事ですわ。そしてから話し合って手続きをしようと思いますけれどよろしいかしら?ええ、わかりました。では呼んで来ますわね。ナターシャ?いるかしら?」

シスターがこっちにやって来るっ。ナターシャの心は震えた。いつもは何で私は貰ってくれないんだろう?と思っていたけど今日は体が勝手に動いて階段を勢いよく駆けて行った。

見つかったら終わりだと、思ったのだ。
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