第1章 退屈な生活を終わらせたい
逃げなきゃと体が反応してしまったナターシャは自分の部屋に滑り込み、ベッドの下に隠れた。息を潜めていると階段を駆け上がるシスターの声が響いた。
「ナターシャどこなの?うーん。誰かが階段を駆け上がった気がしたんだけど・・・うーん・・・あの子が外で遊んでるようには見えないし、この部屋かしら?ナターシャ出てきてちょうだい。」
シスターはナターシャのある部屋に入ってきた。ベッドの布団を捲るもナターシャは出てこない。それもそのはずナターシャはベッドの下にいる。
シスターはそれに気づかずに部屋の中をぐるぐる回って探している。
ナターシャはその間に何か手を打つ方法はないかと考えていた。このままだとあの人達に連れて行かれてしまう。歯を食いしばって考えを巡らせた。そういえば昨日の夜、隣のベッドのエミリーとアンバーが手袋人形を作って遊んでいたっけ?あの手袋はどこに行ったんだろう?
ナターシャはベッドの下の隙間から手袋を探そうとしたが見つからない。シスターはクローゼットを開けてため息をついていた。
「あの子ならここにいると思ったのに。でもよくあることよね。連れていかれると思っているんだわ。ナターシャ!聞いてちょうだい。本当にいいご夫婦よ。資産家でお金持ちなんですって。ただね、ご両親はずっと子供がいなくて諦めていたそうよ。そんな時にこの孤児院を見つけたらしいわ。あなたを養子にしたいんですって。」
シスターの声が部屋中に響き渡る。でもここで登場するわけにはいかない。でも・・・
ナターシャは一か八かでベッドから出てきて隣のベッドの上から手袋を取ると手にはめた。
「あら、ナターシャいたのね。探したのよおぉー何してるの?」
ナターシャはシスターの背中に抱きついて言った。
「さっきの話、聞いていたわよ。でもシスターから先に階段降りてちょうだいよ。私も続けて降りるわ。ちょっと緊張してるの。」
「ああ、そうなの。わかったわ。じゃあ、先に降りるわね。」
シスターが階段を降り始めたのを確認したナターシャはドンッとシスターを押した。
その拍子にシスターは階段から転げ落ちた。激しく落ちたシスターの額からは血が出ていた。