第2章 第七師団
ガバッと慌てて身体を起こす。急に起き上がったためか、目眩で頭がくらりとした。
意識を失う前に聞こえた声は幻聴じゃなかったんだ。
きっとあの時の声の人が助けてくれたんだ!
命の恩人もさっきの神様たちも日本語を話していたってことは、ここは日本の可能性が高い。
私がまだ生きているのであれば、ここがどこかさえわかれば家に帰ることが出来るかもしれない。
パンツのポケットに入れてあった財布を確認する。
うん、お金もキャッシュカードも無事だ。
次に反対のポケットに入っていたスマホを取り出して、地図アプリを起動する。
とりあえず現在地を調べなければ。
「・・・あれ?」
アプリが起動しない。
「なんで・・・って圏外⁉︎」
スマホの左上に圏外の表記。Wi-Fiも繋がっていないようだ。
「嘘でしょ・・・」
スマホの電波も届かないような山奥ってこと?
仕方ない。
人がいることはわかっているのだし、現在地も帰り方も教えてもらえばいいか。
その前に、助けてもらったお礼をなにかしないとな・・・。
何がいいかな・・・。
「・・・おい」
考え込む私に声が掛けられた。随分掠れている。
誰もいないと思っていたため、ビックリして肩を揺らしてしまった。
声の主はふたつ隣のベッドで寝ているようだった。
薄暗くてよく見えないが、声からして男の人だろう。
「すみません、起こしてしまいましたか・・・?」
うるさくし過ぎたかと謝るが、向こうからの反応はない。
また寝てしまったのだろうと、再びスマホへと視線を移したとき。
「それを持ってこっちへ来い」
なんで命令口調?と思ったけれど口には出さず、言われた通りにするべきかどうかを考える。
まあでも入院中はしばらくお世話になるわけだし、同室の患者さんには挨拶は必要かと思い立って相手のベッドへと向かった。『それ』と言われたスマホを持って。
それにしても、大部屋に男女同室ってよくあることなのだろうか?
ちょっとその辺は配慮して欲しいところだ。
「あの・・・うるさくしてすみませんでした」
もう一度謝罪の言葉を告げ覗き込んだ相手の顔に、一瞬息が止まった。
少し腫れの残る顔に、両顎には縫い合わせた痕。
この人、めちゃくちゃ重症なのでは・・・?