第1章 誕生日
寒い。
死ぬほど寒い。
・・・いや、実際このままでは死ぬのか。
この薄着で雪山登山にチャレンジして遭難して死ぬって、めちゃんこマヌケな死に方じゃない?いや、別に好きでチャレンジしたわけじゃないんだけど。
これってさ、頭おかしいだの自業自得だの、絶対ネットで好き勝手言われ続けるやつじゃん。うわー最悪。
そんなどうでもいいことを考えながら体育座りで空を見上げると、先ほどよりも少し暗くなっていることに気付く。
いよいよヤバい。夜になったらさらに気温は下がるだろう。
このままでは間違いなく凍え死んでしまう。
・・・ん?ちょっと待って。
これから夜になる?
私がここに来る前は、確かに東京は夜の帳が下りていた。
もしかしてこれは、単純な瞬間移動ではない?
それとも、日本とは違う国にまで来てしまったということなのだろうか。
考えたところで答えは出ない。
どんな摩訶不思議な現象が起こっていようとも、私が助かる術なんてないのだから。
寒さの感覚がなくなってきた。
目が霞む。
ああ、私、ホントに死ぬんだ。
これは本当に覚悟を決める時かも知れない。
ハタチの誕生日が命日になるなんて、さすがに思ってもみなかったなぁ。
まだまだ色々やりたいことあったのになぁ。
イケメンの彼氏作って、某テーマパークでお揃いのカチューシャをつけて写真撮るのが夢だったのに。
お父さん、お母さん、最期まで迷惑かけてごめんね。
かおりはどこかも知れぬ山中で、この世と永遠のお別れをすることになりそうです。
さようなら・・・
「おい!あっちにも誰か倒れてるぞ・・・!」
薄れていく意識の中、どこか遠くでそんな声が聞こえた気がした。