第1章 誕生日
ハタチの誕生日。
それってやっぱり特別だと思いません?
お酒が飲めるようになるし、煙草を吸っても怒られない。
・・・まあ、煙草は吸うつもりはないけど。
親に守られていた子供時代が終わってしまうという少しの寂しさと、ついに自分も憧れていた大人の女性に仲間入りするんだという大いなる期待感。
少しぐらい羽目を外していても、そこは大目に見て欲しい。
というわけで、無事本日ハタチの誕生日を迎えた私、綾崎かおりも、人生初めてのお酒を飲んで大いに羽目を外していた。
「あ〜!飲んだ飲んだ〜!」
大学の友達が開いてくれた誕生日パーティー。
せっかくお酒が飲めるようになったのだからと、みんなで居酒屋に集まって祝ってくれた。
本日の主役!ということで食事代を免除された私は、人生初めてのお酒を思う存分楽しんで、千鳥足で帰宅する途中だった。
それにしても、私ってば案外お酒に強いのか?
家まで送って行こうかと申し出てくれた友達にお礼を言って、大丈夫だからと断りを入れ1人夜道を歩く。
少しふらつきはするものの、意識ははっきりしていて記憶もしっかりとある。
気持ち悪くなることもなく、むしろ最高の気分だ。
これがほろよいってやつなのかな〜、なんて、初めての感覚を味わいながらわが家へと歩を進めていた。
真夏は夜でも、それはそれは蒸し暑い。
10日以上熱帯夜が続いていると、今朝の天気予報で聞いた気がする。
今日もめちゃくちゃ蒸し暑いけれど、たまに吹く風がお酒を飲んで熱を持った身体には心地よかった。
フ・・・っと、ひと際冷たい風が頬をかすめた。
ぶるっと寒さで身体が震え上がる。
いかんいかん、真夏だからって少し薄着をし過ぎたみたいだ。
薄手のカーディガンの胸元を握りしめて、角を曲がった先にあるマンションへと足早に向かった。
・・・・・・・・・はずだった。
曲がった先は、雪深い山の中でした。
なんで!!!!????