強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第4章 守りたいモノは
自分が意外と諦めが悪くて頑固なのだと、この時初めて知った。
私の為に身を引いたとしか考えられない。
彼が悲しいくらいに優しいのはよく知っている。
そんな貴方を、私は好きになったんだから。
翌日から、学校で万次郎を見る事はなくなった。
三ツ谷君に聞いてみたけど、一ヶ所に定まるような人じゃないから分からなかった。
私はとりあえず万次郎の家で待ち伏せる事にした。
「何か、ストーカーになった気分」
自傷気味に笑って、夕日が落ち始める空を見上げる。
「ちゃん?」
声の方を見ると、エマちゃんがいた。
「マイキー、まだ帰ってないよ。今日は少し遠出するって言ってたし、遅くなるかも」
「そっか……学校にも来てないから、完全に避けられちゃってるね、ははは」
エマちゃんの顔が怒りのそれになる。
「マイキー酷いっ! ちゃんの気持ち全然分かってないんだからっ! ちゃん、まだ時間ある?」
「え、あ、うん」
「ちょっと待ってて」
言うと、エマちゃんはスマホを操作して耳を当てた。
相手は龍宮寺君らしい。
「ちゃん、行くよ」
「え?」
「ちゃんと話さなきゃ。で、思っきり殴ってやって」
私より気合いの凄いエマちゃんに手を引かれ、走り出した。
夜道を二人で走る。
何処まで来たのか、知らない場所を走っていると、高台が見えた。
そこへ向かって行くと、心臓が高鳴った。
体が、緊張する。
「ほら、行ってらっしゃい」
「ありがとう、エマちゃん」
振り返った龍宮寺君が、クスリと笑ってエマちゃんと共に去って行く。
この二人の優しさに、何度も救われている気がする。
しっかりしなきゃ。
「探したよ」
「何か用?」
冷たい言葉とこちらを見ない態度が、私を拒否している。
だけど、こんな事で引けるほど、私の気持ちは軽くない。
「冷たくしたら私が諦めるって思ってるなら、女を甘く見すぎなんじゃない?」
柵に座って景色を見ている万次郎の背中に触れて、額を付ける。
振りほどくわけでも、拒むわけでもなく、ただ黙ってじっとしている。
「万次郎は勝手だね……。私は別れる気はないし、離れてなんかやらないから……」