強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第4章 守りたいモノは
【佐野万次郎side】
毎日ダチとツルんで、喧嘩して、愛機流して、バカやって。
そんな日々が、俺には宝物だった。
女の子に興味がないわけじゃなくて、ダチといるだけで充実していたから、特に必要はなかった。
そんな日常に、という色が、光が差した。
俺のワガママに戸惑いながらも、優しくて可愛い笑顔で応えて、俺が駄目な時はちゃんと怒ってくれるに、惹かれるのに時間なんて掛かるはずがなくて。
誰かに渡すなんて考えられなくて、早く俺のもんにしたかった。
やっと手に入った俺の、俺だけのが、今何処の誰かも分からない野郎に、触られていると考えるだけで、自分の中にある黒い何かがフツフツと湧き上がって、煮え滾る。
明らかな殺意を胸に秘め、俺は指定された場所に辿り着く。
俺が我を忘れる事を考慮して、ケンチンとエマに着いて来てもらった。
俺の為じゃなく、を保護する為だ。
俺が手を汚す所を、見せない為だ。
汚れたマットの上で、引き裂かれた服を隠すみたいに横たわると、に跨る男。
目の前が真っ赤になる。
黒い感情が、溢れて止まらない。
男が何か言っているけど、俺には何も聞こえないし、聞く気もない。
を早くこんなクソみたいな場所から連れ出さないと。
「ケンチン、エマ、を外に」
男達がから離れて、こちらに近づいてくるのと同時に、俺の上着を持ったケンチンとエマがに駆け寄る。
すれ違い様に、をチラリと見ると、不安そうな瞳が揺れる。
そんなに、安心させるみたいに笑う。
「……ごめんな」
お前を傷つけた責任は、取るから。
誰も、生かして帰さねぇから。
もう絶対、俺のせいでお前が傷つく事がないように。俺はお前から離れる事を選ぶ。
だからお前は、俺がいなくても幸せになれ。
「……愛してる……」
男達を見て、俺は脚にしっかり力を入れて踏み出した。