強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第4章 守りたいモノは
ある日の夕方、弟達と買い物に出掛けた帰り、家に向かう私の前に、知らない男の人達が道を塞いだ。
決して、柄がいいとは言えない。
「こんにちわー。あんた、佐野万次郎の女だろ?」
「へぇー、結構可愛いじゃん」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた男達から、弟達を庇うように前に出る。
「突然何ですか?」
「さすが無敵のマイキーの女だな。いい目してんじゃねぇのよ」
睨む私の顎が掴まれるのを、手で払う。
「触らないで下さい。何なんですか?」
「気が強いのもいいじゃん。嫌いじゃねぇよ」
いやらしい笑い方にゾワリとする。
とりあえずは、弟達を安全な場所に避難させなきゃいけない。
「ちょーっと付き合ってくんね?」
「別に何もしないからさぁ。ただ佐野を呼び出すエサになってくれるだけでいいんだよねー」
私は、不安そうにしている昴流と目を合わせる様に、出来るだけ安心させるように笑う。
「昴流、稜流を連れて先に帰っててくれる?」
「でも、ねーちゃん……」
「心配しなくても、大丈夫。後、この事は絶対誰にも言わないって約束して欲しいな。ほら、みんなに心配掛けちゃうから。そうなったら、みんな悲しくなるから、ね? お願い」
納得いかないのか、心配が拭い切れない昴流の頭を撫でる。
「お姉ちゃんには、万次郎もついてるし、ね?」
「分かった。早く帰って来てね」
「うん。稜流の事よろしくね」
全部の不安が拭えたわけじゃないけど、万次郎の名前にはだいぶ効果があったようで、昴流は頷いてくれた。
弟達に嘘を吐くのは胸が痛いけど、危険から遠ざけられるなら、今は何だってよかった。
弟達がいなくなって、私は男達に向き合う。
「私が着いて行っても、彼が来るとは限らないですよ? 私に、彼を動かすような効果はありません」
「謙遜すんなよ。佐野万次郎が、自分の女に入れ込んでんのは、有名だぜ」
万次郎を、わざわざ危ない目に合わせるなんてしたくないけど、私には何の力もなくて。
拒んだ所で、連れ去られて終わるだろう。無力な私は、仕方なく彼等に着いて行く事になった。
用意された車に乗り込む。
自分より、だいぶ大きな男達に囲まれ、怖くないわけはない。震えを隠すのに精一杯だ。
車が停まった場所は、工事中のビルだった。