強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第3章 もっと近くで
万次郎の背に手を回す。
「俺、やっぱが大好きだ。めっちゃ好き」
「うん、私も万次郎が大好きだよ」
こうやって言葉にすれば不安だって拭えるし、気持ちだって伝わる。
どんな時も、万次郎はちゃんと言葉をくれる。だから私もしっかり言葉で返していこうと思う。
「そうだ。はい、お土産」
「おー、どら焼きー」
喜んでくれる万次郎に、もう一つ渡す。万次郎が不思議そうに中身を出した。
「髪ゴム?」
「うん。万次郎にいつも身につけてもらえる物って考えた時、万次郎は髪結んでるから丁度いいかなって。しかも、お揃いなんだー」
私は自分の手首に付いてる、色違いの髪ゴムを見せた。
万次郎がまた嬉しそうに笑った。その笑顔が嬉しくて、私も笑う。
その日にしたキスは、いつも以上に甘くて、優しかった。
翌日、学校の門付近にの壁に、一人の男子生徒が凭れて立っていた。
誰がいるかはすぐに分かった。ただ、いつもと少し違った。
「あれ? 万次郎?」
「おー、、おはよー」
「おはよ。朝からいるなんて珍しいね、しかも一人でなんて。それより、髪、どうしたの?」
いつも後頭部で結んでいる髪が、今日は結ばれていなくて、髪を下ろした状態になっていた。
だからか、幾分幼く見える。これはこれで可愛い。
「髪ゴム。に最初に結んで欲しかったから、待ってた」
どうしよう。そんな可愛い笑顔で、そんな可愛い事を言われたら、キュンとしてしまうじゃないか。
「おおっ、どしたー?」
「万次郎、可愛い」
「の方が可愛いよ」
胴に抱きついた私の背に、万次郎の腕が優しく回される。
「なんちゅーとこでイチャついてんだよ、お前等は」
「マイキー君、朝からいるの珍しいっスねっ!」
振り返ると、三ツ谷君と知らない男の子がいた。
彼が、ヒナちゃんの彼氏の武道君だ。
二人と別れた後、屋上で万次郎の髪を結ぶ為、座る万次郎の後ろで膝立ちをする。
「いつ触っても、万次郎の髪って柔らかいよね。気持ちー」
「そうか?」
万次郎の髪を散々堪能して、お揃いの髪ゴムでいつもの結び方をする。
「はい、出来た」
振り向いたこの笑顔が見れなくなる日が来るなんて、想像もしていなかった。