強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第3章 もっと近くで
さすがに、彼氏のご家族にこの姿を見せる勇気はない。
「恥ずかしいなら、ベッドに潜ってていいから」
そう言うと、扉がゆっくり開かれた。
いくら恥ずかしいとはいえ、潜ったままとはいかないので、とりあえず出来る事をしようと、顔だけ出してそちらを見る。
「さん、おはよー。よく眠れた……って質問は、野暮かな」
ニコリと可愛らしく笑う妹さんに、何も言えずに苦笑するしかない。
「予想してた通りだ。マイキーに彼女がいるのにも驚きだけど、家に女の子連れて来た事も衝撃。寝てても離してくれないなんて、よっぽど貴女が大切なんだね」
楽しそうに言うと、妹さんはふと何かを見つけてそれを手にした。
「嘘……マイキー、これ持たずに寝たの?」
使い古されたタオルのような物とこちらを交互に見て、心底驚いた顔をしている。
「さん、凄い……」
意味が分からず、ただ彼女を見つめるしか出来ずにいると、万次郎が身動ぎする。
「マイキー、もうお昼だよ」
「んー……エマ?」
「ほら、さん離してあげなよ」
「やだ。は俺の」
「いや……別に取らないよ」
呆れたように言って、妹さんはため息を吐いた。
何とか起きてくれた万次郎から解放され、妹さんであるエマちゃんのご好意に甘えさせてもらってシャワーを借り、私はやっと服を着る事が出来た。
「ー、髪やってー」
万次郎が後ろから抱きしめて、甘えるみたいに肩に頭をグリグリしてくる。
その頭を撫でて、まだ多少ボーッとしている様子の万次郎をソファーに座らせ、髪を整えていつもの髪型が完成する。
エマちゃんがわざわざ用意してくれたご飯を頂いた後、縁側で和風の家の雰囲気に、つい寛いでしまう。
そんな私は只今万次郎の膝の上に横向きに座らされ、拘束されて動けずにいる。
「そんなくっついて独占しなくても、さんは逃げないでしょ」
「出来るなら、このままずっと持ち歩きてぇ」
「それは、困るかな」
万次郎が言うと冗談に聞こえない。現に、目がマジだ。
苦笑する私と呆れるエマちゃんの視線が合って、仕方ないと言った顔で二人して笑う。
気にしないエマちゃんのお陰で、万次郎のベッタリ状態にも少し慣れてきた。