強くて、脆くて、可愛くて【東リべ夢】〘佐野万次郎夢〙
第3章 もっと近くで
体を少し離し、万次郎の表情が見えた。
頬が赤く蒸気して、眉を顰める姿が妙に妖艶で、ゾクリとする。
「くっ……今、何で中、締めんのっ……」
苦しそうな顔で、動きを止める万次郎に愛おしさを感じて、頬を撫でた。
その手を万次郎が優しく包んで、唇に持っていく。
仕草が、視線が、私を誘い、堕とす。
「一緒に、気持ちよくなろーな」
「ぁあぁっ……」
言って、私の腰を掴んで腰をゆっくり動かして始める。
痛みはまだ残ってはいるものの、それとは何か違う感覚が襲う。
ゾクゾクするような、お腹の奥からジワジワ来るような。そのせいか、抑えられない声が漏れ始める。
「あっ、あぁっ、あんっ……」
「はっ、ぁ、すげっ、声やばっ……んっ……」
興奮した様子の万次郎の腰の動きが、先程より激しくなる。
そのうち、痛みなんて最初からなかったかのように、快楽しかなくなっていて、気づけば自らも腰を揺らしていた。
二人の荒い呼吸と肉のぶつかる音、更には行為を知らせるみたいな水音とベッドの軋む音が妙に耳に響いて、それすらも興奮の材料になる。
夢中で行為に耽り、何度目かの絶頂の後、気づいたら私は意識を失っていた。
微かに聞こえる扉を叩く音と、遠くからする声にゆっくり目を開く。
「お二人さーん、もうお昼だよー。そろそろ起きてー」
聞き覚えのある女の子の声に、一気に目が冴える。けど、起きようとしても、体が動かない。
見ると、万次郎の腕が私の体を固定している。眠っているとは思えない力で、抱きしめられている。
腕の中に閉じ込めるみたいに、包まれる。
「万次郎っ、起きてっ!」
万次郎にだけ聞こえるように、体を揺らして起こしてみるけど、なかなか起きる気配がない。
何度か試していると、万次郎の眉が歪む。
「んー……ねむぃ……もーちょっと……」
私の胸に顔をグリグリとした後、そのまま埋める。その間にも、外からは妹さんの声がする。
仕方なく少し声を大きくして、扉に向かって応える。
「ごめんなさいっ、動けなくてっ、すぐに、起こしますっ!」
言うと、少ししてまた声がした。
「……入っても、いい?」
まさかの申し出に、戸惑ってしまう。
何せ、今の私はベッドの中にいるとはいえ裸だ。