依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第16章 臨機応変に柔軟に02
少し歩く、と、街中と郊外の間といったところにあるコインパーキングで降ろされ、こっちだ、と手を取られて引かれるまま歩き出す。
身長も歩幅も差があるけれど、🌸に合わせて歩くシャンクスがここ、と指したのは小料理屋といった雰囲気の、蝋燭で灯した灯籠と暖簾がかかるお店だった。
4人がけのテーブル席と座敷が1つずつにカウンター。カウンターの一つに腰掛けて、いらっしゃい、と声をかけてくれたのは、黒のショートカットに、長身でとてもスタイルがよく、年齢不詳のセクシーな女性だった。
シャンクスは常連なのか、やあ、と手を上げて、カウンターいいかな?と🌸を店内に誘導する。
「あら、一人じゃないのね」
好きに座ってー、とカウンターの向こうにまわったところを見ると、彼女が店主らしく、ようやく開放された手で温かいおしぼりを受け取る。
「🌸だ」
「🌸ちゃんね。シャクヤクよ」
シャッキーって呼んで、と色気たっぷりな彼女に、🌸です、と挨拶する。
二人以外に客の姿はないが、シャクヤクが座っていた席の隣には、おちょこが一つと徳利が2本置かれている。椅子には、白のコートがかけられていて男物に見受けられた。
「いつものでいいの?」
「いや、車があるから酒はいいや」
彼女を送らないと、とおしぼりを畳むシャンクスに氷とお茶の入ったグラスを渡したシャクヤクが、🌸ちゃんはなに飲むー?と笑顔で問うてきた。
えっと、と悩む🌸に、飲んでもいいんだぞ?と言うシャンクスが、不意に空いた奥の扉に目をやって、あ、とグラスを置く。
つられて振り向くと、どうやらトイレに入っていたらしい客が出てきたところだった。
柔らかい素材のシャツに、緩めのパンツ。
客が増えたことに気づくと、おや、と目を細めた。
「これはこれは、懐かしい顔がいるじゃないか」
「レイさん」
レイさん。シャンクスがそう呼んだ人は、ウェーブのかかった長い白髪に、同じく白いたっぷりとしたあごひげを蓄えて丸メガネをかけた初老と見られる男性だった。
「シャン坊。久しいな」
「ははっ、もう『坊』って歳じゃないよ」
おちょこと徳利のある席に腰掛けた「レイさん」と目が合う。
断つように一筋、傷の残る目を細めて笑うと、よろしく、とおちょこを掲げられて、こんばんは、と頭を下げた。