依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第15章 臨機応変に柔軟に01
「そんなに笑うことないんじゃ、」
エスコートされて助手席に乗り込んだ🌸はシートベルトをセットしながら、ローの愛車であるドイツメーカーのクロスカントリーと同じ左の運転席に乗り込むシャンクスを横目に見る。
「すまん、すまん」
手持ちがあまりない、と言った🌸に、こちらが誘ったのに支払うつもりだったのかと驚き、でもその考え方が🌸らしくて込み上げる笑いを抑えきれなかった。
「デートに誘って金の心配をした女は初めてだ」
許してくれ、と小さい頭をそっと撫でる。
相変わらず口元で笑っているシャンクスに笑われたことが恥ずかしい🌸はそっぽを向く。
「どうぞお笑いくださいな。社長様のシャンクスさんと違って、私は薄給のしがない公務員なもんで」
もう、と臍を曲げる🌸の髪に指を絡ませ、クスクスと笑う。
「薄給だろうと、市民のために毎日、懸命に働いてるんだろう」
立派な仕事だ、と微笑んだ瞳で言われて、ぎゅっとシートベルトを握る。
公務員というのは、あまりいい目を向けられないことも多い。
融通が利かない、マニュアル通りのことしかしない、税金で飯食ってるくせに、とさんざん言われ、毎年ニュースで国家公務員の給与や予算、賞与額なんかがニュースが流れると、あんなにもらってるの?だの公務員がボーナスもらえる理由がわからない、営業成績もないのにと辛辣な言葉をかけられる。
災害時には、自分やその家族がどんな状況であろうと対応の最前線に立たされ、時には罵倒され、なじられる。
もちろん、感謝の言葉をかけられることも多いけれど、圧倒的に前者のほうが身に沁みて体感するのだ。
ちら、と座っていても少し見上げる位置のシャンクスを見上げる。
相変わらず髪を撫でている。
目が合うと、ニッ、と笑った。
目線を前方に移して、🌸に悟られないように細く息を吐く。
立派な仕事だ、と言った言葉に、嬉しそうにはにかんだ笑顔。
手に収まってしまいそうな小さな頭。
おずおずと見上げるオニキスのような黒曜の瞳。
その瞳にしっかりと映り込む自分と向き合ってしまうと、もう止まらなくなりそうで、出すぞ、と前を見据えたまま、強いハンドルを握ってシフトレバーを握り込んだ。