依々恋々-イイレンレン-@Shanks in 現代社長
第56章 Hope
ワンプレートのモーニングを堪能し、温かい紅茶のカップをソーサーに置く。
向かいの彼は、ミルクを一つ入れたコーヒーを飲んでいる。
「そろそろ支度するか?」
うん、と頷き、着替えてドレッサーでメイクをする。
「化粧、必要か?」「そりゃあ、しますよ」
日焼け対策もあるし、とコンパクトを閉じてリップを取り出す。いつもよりも少し赤みが強いリップを唇に馴染ませ、ポーチを閉じる。
鏡面に写る姿を見上げると、両手で顔を挟まれ、スリ、と指で耳を撫でられる。
「ん、耳くすぐったい」
少し笑って首を竦めると、重なる唇。
名残惜しむように離れた薄い唇が発色している。
「リップついちゃったよ」
拭う指に、ちう、と押し付けられる。
腕を引かれてスツールから立ち上がると、広い胸に抱きこまれた。
「やっと、キスできた」
スリ、と頬にすり寄ると、ちゅっちゅっと繰り返されるバードキス。
「キス、したかったの?」
肩口に額をあてて、こく、と頷く頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ふふ。かわいい」
意外と甘ったれね、と笑うと、グリグリと額をこすり付けてくる。
「やっ、擽ったい!」「かわいいって言うなっ」
「甘ったれはいいんだ?」
ぐっ、と押し黙って俯く様子に、甘えん坊、と柔らかい髪を撫でる。サラ、と髪をかけた耳が赤くなっていて、かわいい、とそこにキスをする。
「っほら、早く支度しろ。遅れたらウタが怒るぞ」
「あなたが手を止めさせたんじゃない!」
バサリとローブを脱ぐ背中に、もう!と呆れてリップを塗りなおす。
「🌸、もう一回『あなた』って言ってくれ」
「?あなた?」
何?と鏡越しに黒曜石の瞳に捉える、顎に手を当てて悩まし気なシャンクス。
「名前で呼ばせるか『あなた』って言わせるか、悩ましいな」
「...案外、呼び方にこだわるね?」
「昨日、『シャン』って言われたのも結構良かったんだよな」
グッときた、と頷いているシャンクスに微笑みかける。
「早く着替えてきて、ダーリン」
「わかった、ハニー」
んぐ、と顔を逸らす🌸。
フフッと吹き出し、俯せる。
「『ハニー』は無いっ!無いよ...」
あっはっはっ、と大笑いしながら手を叩く。
「笑い過ぎだっ」
「も、もう一回言ってっ!」
却下だ、と半笑いで着替え始めたシャンクスは、お願い、と絡む🌸の唇に、うるさい、と噛み付いた。
