第8章 (※)二人切り—その弐
杏(さて、どう出るだろうか。)
二人の部屋に入ると、布団を用意しながらつむぎの様子を窺った。
つむぎは眉尻を下げて複雑そうな表情を浮かべていた。
(……本当に何もしないのかな…。たしかにその方が色々怒らなくて済むのかもしれないけど…でもしばらくって……一体どのくらい…、)
「杏寿郎くん…これ、まくら。」
杏「ああ、ありがとう!」
杏寿郎は枕を差し出す浮かない顔のつむぎを見て、にこりと太陽のような笑顔を浮かべた。
「……………ねえ、」
杏「では寝よう!手を繋いでも良いだろうか!蝶屋敷で約束したろう!」
「うん……。」
つむぎは自身の布団にもぞとぞと入ると、隣の布団に入った杏寿郎に手を伸ばした。
それを熱く大きな手が握る。
(手も男の人になってる…。出会ったばかりの頃とぜんぜん違う…。)
杏「つむぎ。」
杏寿郎はそう名を呼ぶとぎゅっと握る手に力を込めた。
その声が甘く優しかった為に、つむぎは少し期待しながら杏寿郎の顔に視線を移した。