第8章 (※)二人切り—その弐
杏「君は一緒にいたいと思うのは俺だけだと、俺の愛情を全て受け入れると、そう言ったろう。それも嘘か。」
「う、うそじゃ…」
杏「では何故逃げようとした。」
そう言いながら肩に上から力を込める。
「…っ」
つむぎは立っていられなくなるとガクッと膝を畳についてしまった。
杏寿郎はそれに合わせるように、ゆっくりと両膝をついた。
そして俯いて動揺しているつむぎの頬に片手を添える。
杏「やはり嘘を吐いたのか。」
「ちがうってば!」
何度も嘘吐きと言われたつむぎは思わず眉を寄せた顔を上げた。
すると杏寿郎は無表情を崩し、少し優しい顔付きでつむぎの頬をするりと撫でた。
杏「では俺の言う事が聞けるな。」
最終確認と言わんばかりの響きに、つむぎは気圧されて頷いてしまった。
すると杏寿郎は呆気無く明るい笑顔を浮かべた。