第1章 始まり
「はぁっ…はぁっ…」
木々が生い茂る闇夜の中、つむぎは息を切らしながらバッと振り返った。
すると首を斬られた鬼が視線の先でボロボロと崩れていく。
「…………や……、や…った………。」
つむぎは目を見開きながら震える手で刀を鞘に納めた。
そして両手の平を見つめた。
その顔には泣きそうな笑みが浮かんでいた。
「………斬れた!…斬れた…ッ!私でも…鬼の首を斬れるんだ!!」
———『お前は剣士になれない。』
何度も諭すように言われた言葉が頭にこだまする。
しかし、つむぎはその言葉に初めて顔を顰めなかった。
(そんな事はありません、お父様…。)
そう心の中で呟くつむぎの背は低い。
それどころか骨格そのものが華奢だ。
鬼を狩る剣士に向いているとは言えなかった。