第1章 序章
「……おばぁ……ありがとう……行って来るね……」
雨の降り落ちる秋の夕暮れ……東京郊外にある人気のない人里の跡地に私は真新しい墓石に花を手向け、暗闇へと姿を消した……。
「さん!今日、仕事終わったら、みんなでご飯でも食べにどぉーですかぁ〜?」
「すみません、今日は用事があるので……」
「そっか……じゃあ、私のコレ手伝って貰ってもいい?ご飯早く行きたいから!営業課の堀部さんが来るの!!だから、お願いっ!!ごめんね〜!!」
事務の派遣について早3ヶ月……人と繋がる気がないから一人でいる事が多い私……誘いを口実にこうやって仕事を押し付けてくるのも当たり前になってる……別に用事も無いしいいんだけど……。
〔ぇえー、またさんに押し付けたの!?〕
〔だって、早く行きたいじゃん!営業課との合コンだよ?派遣なんて切り捨てなんだから、いい職・いい男を見つけて玉の輿狙わなきゃ!〕
〔そーいって、仲も良く無い、大人しい人に任せるのも悪いよー〕
〔大丈夫!だって、さん、暗いし、物静かだし、連れてっても面白くないでしょ!ほら、後10分!化粧直ししなきゃ!!」
………丸聞こえだっての……まぁ、どうせ暇だし、いいんだけど……てか、化粧直す間に出来んだろ、こんなヤツ……でも、ここは正直、私に合ってるかもね……自分に合わない人とは干渉しない人達の上辺だけの付き合い……。
最低限の生活費だけでも稼がなきゃ……まぁ、“あの時”の蓄えはあるけど、動かすとバレる可能性があるから……。
私…… 、25歳……生まれ変わる前の記憶を持っていて、その時、読んでた漫画の世界で2度目の人生を歩んでる……。
呪術師だった両親は私が産まれて直ぐに、呪いにやられて亡くなった……特級呪霊だったと、おばぁが言ってた……。
それで私は、東京郊外の山里で、おばぁに育てられ、呪術師としてあの時まで生きていた……。
でも、そのおばぁも……3ヶ月前……私を庇って呪霊に殺された……。