第1章 初めての気持ち
「浅岡!さっきは、どした?どうして部屋を飛び出したんだ?何かあった?」
コイツには僕の気持ち知られたらダメだ、絶対に。
「いや、何もないよ、大丈夫」
無理矢理、笑顔を見せたら顔が引きつった。
「何もないって顔じゃなかったけどな、青ざめてたし」
そんなに顔色、悪かったんだ、僕。
自分でも自覚してる以上に彼女の事が好きみたいだ。
「体調悪いのか?最近、浅岡にしては珍しく、ずっと声も出てなかったしさ。」
心配そうに聞いてくれる小橋の顔をまともに見れなかった。
「何でもないよ、心配かけて、ごめん。」
缶コーヒーを一口飲んで気持ちを落ち着かせた。
「今日は美智留を浅岡に紹介したかったんだけど急に部屋を飛び出して行ったから美智留が、心配してたゾ。」
心配してたなんて期待を持たせる様な事を言わないで欲しいよ。
「何で、わざわざ僕に紹介?」
ぶっきらぼうに言った。
少しイラッとしたからだ。
可愛い彼女を自慢したかったのかよ。クソ。
ガチャ
レッスン室のドアが開いて彼女が出て来た。
こっちに、ゆっくり歩いて来る。
ドキドキしてる自分が居る。
全然、諦められてないじゃんか。
やっぱり僕のタイプだ、クソ。
「美智留!こっち、こっち」
小橋が手招きして彼女を呼んだ。
美智留ちゃんは、小橋の前に立ち
「なかなか戻って来ないから心配したよ」
目を潤ませながら小橋に言った。
小橋のヤツ、どんなけ愛されてるんだ?
めちゃくちゃムカつく。
僕、性格、めっちゃ悪くなってる。
二人のイチャ付き振りをこれ以上見たくなくて席を立った。
そしたら美智留ちゃんが「あっ!」と小さい声を出した。
「浅岡!!美智留の話、聞いてやって欲しい」
「何で僕が?」
素っ気なく言い放ったら美智留ちゃんは、目に一杯、涙を溜めて「私、何か気に障る事しましたか?もし、したんなら、はっきり言って欲しいです。私の事、避けてますよね?」
心が傷んだけど、これ以上、好きにならない様に僕は嫌われようとした。
「別に何も」
歩き出そうとしたら彼女が僕を呼び止めた。
「あの、これ」
彼女の差し出された手を見ると僕のスマホのストラップがあった。