第1章 初めての気持ち
「おい、浅岡!」
小橋の止める声も無視して廊下に飛び出した。
そうだよな、あんな可愛い子が彼氏居ないなんて事ある訳ないよな。
僕、バカみたいだな。
別に彼女は僕の者じゃないのに勝手にヤキモチ妬いたりして。
格好悪いな、僕は。
自動販売機の前に置かれた椅子に腰を掛けた。
「はぁ〜。」ため息しか出て来ない。
今頃、小橋が彼女だって他のメンバーに紹介してんだろうな。
僕は、それを聞きたくなくて部屋を飛び出した。
あの日、一瞬だけ会った彼女にこんなにも本気になってるなんて笑えるな(笑)
ん?何か頬が濡れてる?
いつの間にか泣いてるし、本当に格好悪いな、僕は。
「浅岡!」
呼ばれて顔を上げると小橋が缶コーヒーを僕に差し出しながら立ってた。
僕は涙を拭いて「サンキュ」と言いながら受け取った。
「それ美智留からの差し入れ。」
「美智留。。。ちゃん?」聞き慣れない名前に首を傾げた。
「あぁ。さっきレッスン室に来てただろ?」
「美智留ちゃんって言うんだな。」
名前を知れて嬉しかったけど彼女は小橋の彼女なんだから、これ以上、好きになってはイケないんだ。
自分の気持ちにブレーキをかけないとな。