第6章 余裕がない心
【雄也side】
〜雄也の部屋にて〜
仕事が終わって帰って来てすぐに玄関のチャイムが鳴った。
♪〜ピンポ~ン〜ピンポ~ン〜♪
「疲れてるのに誰だよ〜」
ダルイ身体を引き釣りながら玄関に向かった。
「は〜い」
ガチャッ
「やぁ!」
ドアをチェーンで開くところまで開けたら弟の和也だった。
ふとスマホの時計を見るとあと5分で日にちが変わるところだった。
「どうしたんだ?こんな時間に」
こんな遅い時間に来るなんて珍しい。
「何かあった?」
ドアのチェーンを外してドアを開けた。
「ちょっと兄貴に話があって。」
「話?どした?とにかく入って。」
靴を脱いで入って来る和也。
「お邪魔しまぁす。こんな時間に悪い」
そう言いながらリビングに入ってソファに座る。
僕はキッチンで2人分のコーヒーをマグカップに入れてリビングで一つ和也に渡した。
そして僕も和也の向かいのソファに座った。
「で?話って何?」
コーヒーをすすりながら尋ねた。
「兄貴にさぁ、僕達の中学生の頃の話したの覚えてる?」
中学生の頃の話?
「もしかして夏休みの話?」
うっすら記憶はある。
「あぁ。僕らは夏休み、親父達が仕事で忙しいから毎年、婆ちゃん家に遊びに行ってた。」
「そうだったな。」
「中学生になった頃の夏休み、毎年の様に婆ちゃん家に泊まりに行って、その日は、朝から一人で虫取りに山へ行った。そこで僕より少し幼い女の子と出会った。彼女は、何だか、ほんわかしていて、笑うと凄く笑顔が可愛らしい子だった。僕は、彼女に人生初めての一目惚れをした。」