第1章 始まり
まだ傷口は少し痛むが、歩けないほどではない。
身体の調子を確かめながらゆっくりとベッドから下りると、一階へ向かった。
「ミキ・・・」
私の姿を見て、母さんが心配そうに駆け寄ってくる。
「まだ寝てないと駄目じゃないか」
「もう平気。それより・・・エアリスは?」
母さんはため息を吐くが、それ以上何も言ってこなかった。
言っても聞かないと思って諦めたんだろう。
「花売りさ。壱番街に行くって言ってたよ」
・・・また一人で行ったんだ。
私は顔をしかめた。
あれほど一人で外を出歩いちゃいけないって言ってるのに。
『今入ってきたニュースです』
付けたままになっていたテレビから、切迫したキャスターの声が聞こえてきた。
『つい先程、何者かによって壱番魔晄炉が爆破された模様です。犯人は確定していませんが、恐らく反神羅組織を自称しているアバランチだと思われます。繰り返します。つい先程・・・』
思わず母さんを見やると、彼女も同時にこちらに目を向けた。
・・・エアリスは壱番街に花を売りに行っている。
もしかしたら、巻き込まれてるかも―――。
「エアリスを迎えに行ってくる」
母さんは反対しなかった。
心配そうな顔で頷く。
「気をつけるんだよ」
「うん」
再びテレビに目をやると、魔晄炉が爆発したときの様子が映っていた。
映像を見る限りでは、かなり激しい爆発だったようだ。
エアリスは大丈夫だろうか。
『住宅街への被害は少ないようですが、魔晄炉内にいた人々の生死はまだ確認が取れていません。救助活動もまだ始まっておらず、これからの見通しもついていません・・・』
恐らく・・・魔晄炉内にいた人々は、もう命は無いだろう。
「・・・酷い話だね」
母さんは苦々しげに呟いた。
私も小さく頷く。
「星を救うためだったら何をしてもいいわけじゃないよ」
それだけ呟くと、玄関に向かって歩き出した。