第2章 プロローグ 亡命
シノンの表情が少し曇る。
「それじゃぁ今日は…」
ハノンが頷く。
良くない事が起こると言っても、そんなに大事ではない。
しかしその日毎に事が大きくなっているような気がしていた。
それはシノンも感じている事で。
夢に出てきたユキネについては、二人も特に注意して見守っている。
「姫様。食堂にて王がお呼びです」
「お父様が?分かりました」
二人へ近づいてきたメイドの言葉に、ハノンがそう返事を返した。
元々朝食のため向かっていたのだが、改めてメイドから呼び出しがあるという事は何か用があるのだろう。
シノンは若干首を傾げながらも、ハノンの後を追って足を進めた。
食堂に入ると国王・ハイドと王妃・シリアが既に席についていた。
「「おはようございます。お父様、お母様」」
「おはよう。ハノン、シノン」
にっこり微笑むシリアに二人も微笑み返した。
そんな様子を見ながらハイドも小さくうむと頷く。
メイドに促され席についた二人にすぐに本題をとハイドが口を開いた。
「本日、マルクトから使者が来る」
「え?急…ですね」
不安そうな表情をしたハノンに、ハイドがフッと優しい笑みを浮かべた。
「そう心配するな。いつも使者だ、問題ないだろう」
「……はい」
「…………」
ハイドの優しい表情にハノンが未だ不安の表情のまま返事をした。
その横で、シノンの表情は固いままだった。
ハノンの夢のことがあり、そのタイミングでのマルクトの使者…。
シノンの様子に気づいたシリアに何かあったのかと問いかけられるが、シノンはなんでもないと笑顔を向けた。