第3章 第一話 運命
するとそこに現れたのは一人の男だった。
「うわっ!あ、あんたたちまさか漆黒の翼か!?」
「…漆黒の翼?」
「!…あの人は…」
男女三人組の盗賊団だと言った男は、すぐに人数が合わない事に気づいた。
そんな男にユキネが近づく。
「フン、俺をケチな盗賊野郎と一緒にすんじゃねぇ」
「…そうね。相手が怒るかも知れないわ」
「あのなっ!」
言い合いを始めたルークとティアを、まあまあとシノンが宥める。
その間ユキネが男へ話しかけていた。
「あれ?あんたは…」
「漆黒の翼の目撃証言があったので、確認しに来てました。…その途中にあの髪の長い女性と、赤い髪の少年に会いまして…」
あの二人には、とある事情で自分たちは任務でこの渓谷に来たが道に迷ってしまった新米兵士だと名乗っている事を男へ伝えた。
水色の髪をした二人は自分の連れだと言う。
訝しげな表情を浮かべた男だったが、ユキネの正体を知っている男は詳しくは聞かなかった。
この男は辻馬車の馭者だ。
ユキネが任務でマルクトの各地を周っている時に知り合った。
とりあえず適当に話を合わせて欲しいと言われて、馭者の男は分かったと頷いた。
男から離れて、ユキネがルークへ呼びかける。
「ルーク様。こちらは辻馬車の馭者の方だそうです」
「馬車…!」
「この近くで馬車の車輪がいかれちまってね…」
その際に水瓶が倒れて飲み水がなくなったからここまで汲みに来ていたと馭者が言った。
助かった!とルークが喜ぶ。
渓谷内を歩いて疲れ切っているのだろう。
ティアが馬車は首都へも行くのかと聞いた。
終点は首都だよと馭者が答えた。
「…ユキネ」
ティアが聞いているのはキムラスカの首都だろう。
しかし馭者が答えたのはここ、マルクトの首都だ。
このままグランコクマへ連れて行くのかとシノンに目で問われ、ユキネはこくりと頷いた。
(第七音素が干渉し合ってキムラスカから文字通り『飛んで』きたのなら、ジェイドに少し調べてもらわないと)