第3章 第一話 運命
本当にごめんなさいと少し落ち込んだように謝るティアを見て、ルークが気まずそうに視線を逸した。
「ま、まぁ屋敷の外へ出れることなんざ滅多にねーし、散歩がてらっつーのも良いかもしれないけどな」
「……。あなた、帰りたいの?帰りたくないの?」
ワンテンポ置いて、ティアが不思議そうに首を傾げた。
様子を見ていたハノンがティアの様子に苦笑する。
そういう意味ではなく、ティアの落ち込みようを見てルークがそう言ったのだとハノンは思っていた。
(随分と我儘で生意気ではあるけど、優しい所もあるのね)
「帰りたいに決まってんだろ!こんなとこで何しろってんだよ!」
「だったら!休んだら早くここから抜けましょう」
散歩ならもっと安全な所ですればいい。
そう言ったティアはやっぱり分かっていないようで、ルークが小さく舌打ちをした。
ルークの傍からティアが離れ、入れ替わりにハノンが小さく笑いながらルークの元へ近づいた。
手には綺麗に切り分けられたリンゴが乗った皿を持っている。
「これ…」
「どうぞ、ルーク様。見たところお二人は何も持っていないようでしたので…」
食べ物も、飲み物さえ持っている様子のないルークとティア。
そんな中続いた戦闘。
見ればティアもシノンからリンゴの乗った皿を受け取っている。
「あ、ありがとな…」
「いいえ。ルーク様の体力が回復したら、向かいましょう」
飲み物も必要でしたらお申し付け下さいと言ってハノンはその場を離れる。
ルークはそんなハノンを見ながら、皿の上のリンゴを口へ運んだのだった。
休憩を終えて足を進め、それからさらに数時間後。
辺りがわずかに明るくなり始めた頃、渓谷の出口が見えてきた。
「出口よ!」
「ようやくここから出られるのかよ。もう土くせぇ場所はうんざりだ…」
心底嫌そうに言ったルークは渓谷を出ようと駆け出そうとした。
ハッとしたユキネがルークの腕を掴んで引く。
「…誰か来ます」
「!!」
ルークを後ろに隠し、ユキネが前へ出た。
ハノンたちも少し身構える。