第3章 第一話 運命
ルークたちには悪いけれど、一度グランコクマに来てもらう。
「乗せてもらおうぜ!もう歩くのはうんざりだ…」
お前達もいいよな?とルークがハノンたちを見る。
ルーク様がそう仰っしゃられるのならとユキネが答えた。
「そうね…私たち土地勘がないし、お願いできますか?」
「…首都までとなると一人12000ガルドになるが、持ち合わせはあるのかい?」
「…高い…」
ティアがぽつりと呟く。
公爵であるルークにとってはそんなものははした金のようで、安いじゃんと答えた。
「首都についたら親父が払うよ」
「そうはいかないよ。前払いじゃないとね」
馭者にそう言われて、ティアが懐から綺麗な宝石のついたペンダントを取り出す。
それを見たシノンが優しくティアの腕を掴んだ。
「ティア。大丈夫だから」
「え……?」
「わたしが払います」
シノンが馭者へ向かって歩く。
シノンは二人の様子を窺っていたが、ルークもティアも手持ちはないようだった。
元々バチカルへ行くわけではないからファブレ公爵が着いてから払うというのも無理な話ではあったのだが。
ティアがギュッと胸元で手を握りしめた時、シノンには何かを押し殺しているように見えた。
そうして取り出したペンダントはとても綺麗なものでついている宝石はかなり値が張る物だと分かったが、そのペンダントはきっとティアにとって大事なもので。
そうじゃなきゃ、あんなに辛そうな表情をするわけがない。
そう思ったシノンは代わりにお金を払う事にしたのだ。
いいよね?と一瞬だけハノンとユキネに目を合わせたシノンに二人は頷いた。
「まいど。…それじゃぁ、馬車はこっちだ」
「ごめんなさいシノン。必ずあとで返すわ」
「気にしないで!」
首都に戻れるなら良かったとシノンは笑う。
そうして馭者のあとに続き、五人は歩き出した。
この出会いが、ルークたちとハノンたちの長い長い旅の始まりを告げる。
―――――逃れた三つの光は聖なる焔の光を支える柱となるであろう。