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【TOA夢】それでも私は生きていく【長編】

第3章 第一話 運命


うわぁ!と叫んだルークの前に細剣を抜いたハノンが立ちはだかり、猪の突進を受け止めた。
大丈夫ですかと声をかけられ、ルークも慌てて腰に下げている剣を手に取った。

「ルーク様、ご無理なさらず…!」
「お、俺だって戦える…!バカにするな!」
「…分かりました、お気をつけて」
「炎よ、その身を弾丸に変え敵を焼き尽くせ…」

シノンの詠唱が聞こえてハノンは魔物を弾き飛ばす。
その瞬間、ファイアボール!という声と共に火の玉が魔物へ向かった。
焼かれた猪が熱さに悶えている所にルークの剣技が炸裂する。

「双牙斬!」

斬り上げた魔物は宙で散った。
お見事、とハノンがルークに言う。

二人の様子をちらりと見て、ティアはすぅ…と息を吸い込んだ。
瞬間、歌声が辺りに響き渡る。
綺麗だなぁ…とシノンが聞き惚れているとそこに魔物が近づいてきた。

「ナイトメア!」

ティアの声と同時にその魔物の動きが鈍くなる。
おぉとシノンが感動してその魔物から距離を取りながら、ファイアボールと叫んだ。

「今の譜歌だよね?こんな効果の譜歌なんて初めて見た」
「この譜歌は…ユリアの譜歌なの」

シノンの問いに答えたティアの言葉を聞いて、魔物を大鎌で斬り裂いたユキネが振り返った。

ユリアの譜歌。
通常の譜歌は戦闘で使われるほど強いものではない。
しかしユリアの譜歌だけは譜術と同等の力を発揮すると言われている。
だがユリアの譜歌は使える者が限られている。

「(その譜歌を歌えるという事はティアは…)」
「これで最後!」

思考を巡らせるユキネをよそに、ドッ…!とハノンが魔物の体を貫き辺りは静まり返った。
ホッと息をついたルークがその場に座り込む。

「ふぅ…。…た、たいしたことねーな…」
「安心するのはまだ早いわ。ほら、そこにも魔物がいる」

ティアが指を差した先では先程の魔物たちがウロウロしていた。
木々に囲まれた狭い渓谷内では、接触すれば戦わざるを得なくなる。
だから気をつけてと、あまり声を上げないようにと声量を小さくしたティアが言った。

それにしても…。
ティアは新米兵士だという三人の方をちらりと見る。

随分と戦い慣れている、腕も確かだ。
任務で来たというこの渓谷で道に迷ったと言っていたが。
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