第3章 第一話 運命
その様子を見ながらティアが頭を抱えてはぁと小さくため息をつく。
なるほど、聞き覚えのあるような名前と外見はそういう事かとユキネは思った。
ハノンとシノンも本名を聞けば流石に分かったのだろう、驚きに目を見開いている。
しかしすぐにハッと我に返り、ハノンとシノンもユキネに続いて演技をした。
「ル、ルーク様でしたか!これは失礼致しました…!」
「シノ…いえ、私たちはまだひよっこで…まさかルーク様だとは気づかず…」
ハノンの言葉に続いて、シノンが一人称を言い直しながら慣れない敬語を使う。
無礼な態度を申し訳ありませんでしたと頭を下げる三人にルークは少し居心地悪かったのか少し焦ったようにして頭を上げろと言った。
ルーク・フォン・ファブレ。
キムラスカの王国・ファブレ公爵の一人息子だ。
「バチカルまでの護衛役、もちろんお引き受け致します」
「お、おう…よろしく頼む」
「それで、バチカルへ帰る方法なのですが…」
ルークの背後に視線を向けてユキネが海が見えると言った。
その言葉に反応してあれが海なのか…と初めて見たというようにルークが呟く。
ハノンはそんなルークを横目に見ながら、ユキネの言葉を聞いていた。
この渓谷を抜けて、海岸線を目指す。
街道に出られれば辻馬車があり、バチカルへ帰る方法もあるだろうと言った。
渓谷を抜けるには川沿いを下っていけばいずれ海に出られる。
ティアがこくりと頷いた。
「そうね。私もあなたの意見に賛成よ。…えぇと…」
「すみません、自己紹介が遅れました。わたしはユキネ」
「私はハノンといいます。こっちは妹のシノン」
「よろしくお願いしますね!」
簡単に自己紹介をし、ティアと握手を交わした。
さすがに護衛としてルークと握手を交わす事はしないが三人はルークに向かってお辞儀をする。
「では行きましょうか」
ユキネの言葉に四人は足を進めた。
しかし少し進んだ所でユキネが足を止める。
同時にガサガサと草陰から頭から葉が生えた魔物と先程の猪の魔物たちが飛び出してきた。
「な、なんだこいつら!!」
「魔物よ!」
「じょ、冗談だろ、魔物って…!!」
狼狽えたルークに向かって猪が突撃してくる。