第3章 第一話 運命
シノも気になってるんだよね~と本を腰に戻しながらシノンがユキネを見る。
細剣を鞘に収めたハノンもユキネへ視線を向けた。
そんなに気になるものなのかとユキネは当たり前のようにコンタミネーション現象だと言った。
コンタミネーション現象。
物質同士が音素と元素の違いによって融合する現象である。
しかしハノンとシノンはそう言われてもよく分からずに首を傾げるだけだった。
「うーん…とりあえず音素と元素の違いを利用してるって事ね…」
「そういえばジェイドもユキネと同じように槍を取り出していたような…」
シノンは一度だけ戦闘をジェイドと共にした事がある。
その時ジェイドの手にはいつの間にか槍が握られていたのを思い出した。
ユキネがこくりと頷いた。
コンタミネーション現象については、そのジェイドから教えてもらったのだ。
「シノにも出来るかなぁ?」
なんだか楽そうでいいなと言ったシノンにユキネは出来ると思うと言った。
だが武器は見える位置にあった方が良い。
特に女性、周りには隠しているとはいえ王女の立場である二人だ。
手ぶらの様子を晒せば狙われやすくなるだろう。
「だから二人はそのままでいいんじゃないかな」
腰に下げている状態でも特に問題ないのであれば。
その言葉にシノンは少しだけ不服そうな表情をしたが、ハノンにも宥められてはーいと返事をした。
「あまり大きな渓谷ではないと聞いてたけど、それでも広いね~」
「さすがに半日では捜索しきれなかったね」
タタル渓谷へ到着したのはまだ朝方だったはずだ。
しかし今はとっぷりと日も暮れて辺りはすっかり真っ暗になっている。
さすがにこのまま渓谷内をウロウロするわけにも行かず、三人は野宿をする事にした。
だが今は違うとはいえ元々は王女だったハノンとシノン。
祖国にいる時には絶対に経験する事がないはずの野宿。
ピオニーに匿われてからはユキネは任務で度々経験したが、ハノンとシノンは初めてだった。
ユキネが大丈夫かと声をかけるが二人は大丈夫と言った。
「実はシノは結構楽しみだったりする~!」