第2章 プロローグ 亡命
ブルイヤールの王女との事でハノンとシノンは城から出ないようにと言われていたが、王女という事はもちろんのこと、そもそもブルイヤールという国自体も知られていないのだ。
そんな自分たちが城で過ごしているなど不思議に思う人もいるだろうし、何より逆に怪しくもなってしまう。
そのためピオニーの部下という立場で過ごすことを決めたのだ。
ユキネに至ってはそのまま二人を陰で守り、ピオニーからの仕事をこなしている。
ハノンもシノンもユキネも、戦闘能力が高く仕事ぶりもかなり優秀なものだった。
ハノンは街中で聞いた話を伝える。
「漆黒の翼か…タタル渓谷…」
「ジェイドは確か別件で今出てますよね?シノンから聞いてます」
シノンは譜術の能力を買われてジェイドの側にいる事が多い。
一応王女という立場もあり、ジェイドの部下という事にはなってはいないが。
命令下さればタタル渓谷へは自分が行きますとハノンが言った。
「かなり遠い道のりになる。キムラスカも近いしな」
本当はそこへ向かわせたくないのだが、とピオニーは小さくため息をついた。
それでも盗人を放っておく事はできない。
長考の末、ピオニーはよし!と大きく頷く。
「ハノン!シノンとユキネを連れて調査に向かってくれ」
「二人もですか?」
念のためだとピオニーは言った。
あれから四年も経っている。
ブルイヤールでの三人の姿はほぼ知られていなかったし、この四年間も何もなかった。
問題ないだろうと判断したのだ。
「遠出もほとんどしたことが無いだろ?旅行気分で三人で行ってこい」
「はぁ。…でも目的は盗賊団を捕らえることですけどね」
旅行気分になんかなれるわけがないが、それでも世界を見て回るのは良い事だろう。
特に鎖国同然だったブルイヤールにいたのだ。
ハノン自身も少しだけ楽しみに思っているようで、表情が少しだけ緩んでいる。
そんな様子を嬉しく思いながら、ピオニーがお土産よろしくなと笑った。