第2章 プロローグ 亡命
それからは急いで荷物をまとめて、ユキネを先頭にハノンとシノンは走った。
クラウスに、…王に教えられた道を進み隠された洞窟へ。
そこには一艘のボートが置いてあった。
ハノンとシノンを乗せて、ユキネは辺りを確認してから操縦席へ。
荷物を整理しながらその様子を見て、シノンが声を上げた。
「ユキネ、船の運転なんてできるの!?」
「できるよ。昔習ったから」
さすがは二人の護衛役と言ったところか。
ユキネはあらゆることを平然とこなす。
すぐにエンジン音が鳴り、ユキネが二人を振り返った。
「この島から出てグランコクマに行く。ピオニー陛下に匿ってもらうために。長い船旅になると思う」
「ちょっと待って…グランコクマって、マルクト帝国じゃ…?」
今回襲ってきたのは使者であるマルクトの国なんじゃ…とハノンが言った。
答える前に、ユキネはボートを発進した。
急ぐ必要だったために簡単にしか説明してなかったユキネは操縦しながら答える。
確かにマルクトの使者が来るという予定だった。
しかし来たのは、確かにマルクトの使者だったがキムラスカの兵士たちも一緒に来ていたとの事だった。
そうして攻撃を仕掛けてきたのは、キムラスカの国だったという。
「そんな…じゃぁそのマルクトの使者っていうのは、マルクトとブルイヤールを裏切ったということ?」
うん、とユキネが頷く。
だから協力関係にあるはずのマルクトへ逃げる事が、自分たちの目的なのだ。
しかしグランコクマへ向かう途中、キムラスカ軍に遭遇するかもしれない。
敵国の地域に堂々と居る事はないだろうがもし見つかったら逃げるとユキネは言った。
直接顔を合わせた事はないのでブルイヤールの王族という事はバレないとは思うし、念のため三人は大きなマントを羽織って姿はあまり見えないようにしているのだが、素性を明かせと言われたら面倒だからだ。
「その時、もしかしたら戦闘になるかもしれないけど…わたしはこの通り運転中だから、申し訳ないんだけど戦闘は任せてもいいかな?」
「分かった!シノに任せて!」
「手伝いたいのは山々なんだけど、私は譜術は苦手だから…」