第2章 プロローグ 亡命
『赤』と返事を返しながら二人は扉を開けた。
そしてユキネの姿を見て驚いて言葉を失った。
「ユキネ…!?どこか怪我を…!?」
「?…あぁ大丈夫、全部返り血だから」
慌てて救急箱を取りに行こうとしたハノンに平然と答えたユキネ。
ユキネの体には所々に血がついている。
怪我はないというユキネに二人はホッとしたが、しかし同時にその様子は二人が嫌でも理解する事となる。
元から嫌な予感がしていた夢と使者。
そして先程の大きな音、ユキネの様子。
認めたくない事実が二人へと突きつけられた。
「……ユキネ」
「…王からわたしへ命が下されました。これから二人を連れてこの島を出ます」
スッと片膝をついたユキネが二人に向かって言った。
―――――まさかこの島を出る事になんて…。
「待ってユキネ!…お父様とお母様は?」
「…。わたしに下された命は二人を連れてこの島を出ることのみ。王と王妃については…」
「そんな…」
ハノン…と震えた声で呼んだシノンを、ハノンがふわりと抱きしめた。
ハノンの体も震えていたが、しっかりと言葉を紡ぐ。
「お父様の言葉を思い出して。こんな事があった時…どうしろとお父様は言ってた?」
「……『何があっても必ず生き残れ』……ッ…」
自分たちの後を追うな。
たとえそれが、二人だけになっても―――――。
それが、父の…両親の願いだった。
溢れる涙をシノンが拭う。
気づけばハノンの瞳からも涙が溢れていたが、瞳の奥の強い光は失われていない。
「ユキネ。私たちは貴方の指示に従います」
「…必ず貴方たちをお守り致します」
涙声でも強くそう言ったハノンに、深く頭を下げてユキネは言った。
―――――この命に代えても、必ず。