第1章 1
「あ、ありがとうございます。」
「それで?スケジュール変更するの?共演者さんはまだ到着に時間かかりそうなの?」
「あ、はい、電車がまだ動かないらしくて、いつ到着するか全くわからないみたいで・・・。」
俺は、ちゃんがメモを見ながらこれからの撮影スケジュールを確認するのを黙って聞いてた。
「・・・と言う感じになるかと思います。何か・・・質問とかありますか?」
「ううん、わかった、ありがとう」
「共演者の方が到着されたらまた呼びに来ますので、それまで待機でお願いします」
「うん、わかった」
言いながら立ち上がる彼女にならって自分も立ち上がる。
「じゃぁ、失礼します」
ちゃんがメモ帳代りの手帳を胸に抱きしてるように抱えて、俺に小さく会釈し歩き出そうとした時だった。
無造作に床に置いてあった俺のリュックに足を取られたのか、ちゃんの足がもつれ大きくバランスを崩した。
「あっ」
「危ないっ」
彼女と俺の声が同時に響いて、俺は慌てて体勢を崩した彼女を支えようと腕を差し出す。
その瞬間、ちょっとした衝撃と共に、彼女が俺の胸にぶつかって、俺はそれを支えようと彼女の背中に腕を回し一歩後ろに後ずさる・・・はずだったのだが、そこにはベッドがあり、俺も足を取られ、彼女の体を抱えたままベッドに倒れこんだ。
ボフッと音がしてベッドが軋んだ。
俺はちゃんを抱きかかえたまま、彼女を伺う。
「大丈夫?怪我してない?」
俺の声にちゃんが俺の胸から顔を上げた。
その顔は真っ赤に染まっていて、俺の心臓もドクンと大きく高鳴った。
「ご、ごめんなさい、下野さん、大丈夫ですか?」
慌てて起き上がろうとする彼女の背に回した腕にグッと力を込める。
離したくない。
「下野・・・さん?」
「・・・・」
俺は無言のまま彼女の頬に指を這わせた。
その頬はさらに赤く染まっていき、彼女の瞳が戸惑いと恥じらいを灯して揺れ動く。
「下野・・・さん・・・?」
ちゃんの困惑した声が耳に届いた。