第4章 きもち
お互いに非は認めたくないようだ
「ほら、始まるよ!初花火!」
雪がそう言うと同時に夜の空に1つの光が昇る
それは暗闇の途中で止まり、弾けた
パァァァン
それに続くように何発もの花火が打ち上がる
「すごい、絶景だね。さすがにこんな近くでみるのは初めてかも」
「………。」
五条も雪もその綺麗な花火に釘付けだ
雪はふと五条の方を見る
初めての花火に夢中になっているその蒼い瞳には花火が反射していて、すごく綺麗だった
雪は幸せそうに微笑みまた、花火を見る
「私、呪術師になって良かったかも。」
「なんだよ急に」
五条が花火を見ながら聞き返すと雪は座っていたところから立ち上がり、花火を背にし、五条を見る
そして、今日で1番の純粋な子供っぽい笑みを浮かべた
「君たちに会えたから!」
五条はその綺麗さに思わず目を見開いた
後ろで開く花火が、雪を引き立てるただの背景になるほどに
雪は幸せだった
廃墟ビルの屋上で後輩と花火を見る。こんなの呪術師やってなきゃ得られない経験だ
そしてそれは五条自身もそうだろう
「私、これから沢山の初めてを君に見せるよ。プールとか、遊園地とか水族館とか!」
だから教えてあげたい。沢山の楽しい所
「今度はあの2人も誘って4人で行こう!絶対君にとって最高の思い出になる。人生で1番の思い出にしてみせる。…だから」
そう言いかけ、雪はさっきとは違い、少し悲しそうに笑った
「君たちは、死なないでね」
それは同級生のみんなに置いていかれた、雪の本心の言葉だった