第5章 春情【五条視点】★
残念ながらその夜のうちにゆめに構って欲しいと伝えられはしなかったが、次の日に休憩中に伝えると、
「では、悟様に構ったら私に見返りはあるのですか?」
と聞かれて、ねだるように彼女から爪先立ちで口付けられ、僕の腕の中で上目遣いで見つめてきた。
「ゆめのこと、一生大事にする」
「それは、一週間前も聞きましたよ」
二人でじゃれ合いながら、不意にゆめが僕の胸に頬を押し付けて笑った。
その可愛さだけで心がギュッと掴まれて、思わず、柔らかい唇に噛みつくように口付け仕返した。
勿論サービスすると僕は答えて、いつもより長めに愛撫して、グズグズに蕩けたゆめを抱いた。
「……あなたと一緒なら、どんな辛いことがあっても、私は平気です」
と、呟いて耳まで桃色に染め、僕のシャツを握りしめながら肩口に顔を埋めるゆめが愛しくて、僕の腕の中にスッポリと収まるその体を抱きしめた。
そして、季節は巡り――。
結納や両家の顔合わせも済ませ、10月に無事挙式の日取りが決まった。
ゆめは、女中頭の座を信頼できる他の者に譲り、本格的に僕の補佐として動いていた。
僕も挨拶回りに時間を割かれたり、各方面へ手紙をしたためたりと、当主としての仕事をきっちりとこなし、忙しい日々を送っていた。
小蝿のようなジジイ共や、呪術界の上層部のお小言も何のその。ゆめがいるだけで、心身が穏やかになる。
ゆめとは、主従ではなくなったため、僕を「悟」と呼び捨てにしてくれるようになった。
名前を呼ばれる度に、彼女への愛しさが募り、ゆめが引くほどの愛情表現をしている。
今まで以上にゆめと過ごす時間を大切にするようになり、僕の提案で休日には一緒にデートに出掛け、たまに二人きりの時間を過ごし、夜になると甘い時間を過ごしていた。
僕がゆめを初めて抱いた時には奇跡的にも妊娠しなかったらしいが、籍を入れるまでは避妊を徹底しろと彼女からお説教を食らったので、毎回約束を守っていた。
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