• テキストサイズ

【呪術廻戦】御当主様は褒められたい【R18】

第3章 花氷【夢主視点】



凍てついた花が氷解して再び咲き誇るように、あなたと過ごす時間だけが、私の心が綻び、華やぐ唯一の時間だった。



――そこまで回想したところで、夏油さんが泊まる部屋の前まで辿り着く。


毎年世話になるね、と言いながら彼は部屋のドアノブに手を掛けた。

ドアを開けてから、お互いの間に沈黙が訪れた後、相手がこちらを振り返る。


「悟はさ、高専では教師もしてるから普段はしっかりしてるし、一通り卒なくこなせる天才肌だよ」


私も高専時代はその才能に嫉妬した、と。

遠くを見るような目で夏油さんは苦笑を浮かべた。


大人になってからは、お互いがお互いを羨ましいと感じていたことを知った。
時が経たないと視えてこないものもある。
今は昔と同じ、良い関係を築けていると思う。

そう語った後で、今も悟様と親友でいらっしゃるその人は、意地悪な笑みで問いを投げかけてくる。


「子供みたいに振る舞う姿と……どっちが本物の悟なんだろうね?」 


愚問。

私にとっては、ただお一人。何にも変え難い、唯一無二の方である。


「私は、どちらでも構いません」


迷いなく答えた私に、呆気に取られた後、夏油さんが眉尻を下げた。


「悟は、ああ見えて寂しがり屋だから。よろしく頼むよ」


その言葉に、私は否定や肯定の返事もせず、深々と頭を下げる。

ドアが完全に閉まって彼の姿が見えなくなるまで、私は頭を上げることが出来なかった。




近い内に悟様の元を離れると、決めたから。




花氷 END.


/ 47ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp