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【呪術廻戦】御当主様は褒められたい【R18】

第3章 花氷【夢主視点】



【ゆめ視点】


悟様のご友人の中で、「夏油傑」は油断ならない人間として認識していた。私の経験からくる、単なる勘だ。

この人は他人の心理を読むことに長けている。

人の感情の機微を細かく感じ取り、巧みに対応を変えてくる、大変器用な御仁だという印象を持っていた。


「夢野さん、私は婿養子もいけるけど……どう?結婚しない?」

「お気持ちだけで結構です」

「相変わらず難攻不落で、ツレないね」

「お褒め頂きまして光栄です」


この男性は人好きのする笑顔を浮かべながら、心にも思ってもいないことを口にして相手の動揺を誘うのが手口。

こちらの心の動きを探るような視線を、微笑んだ細い目の奥から感じていた。毎年の事なので、もう慣れたものだ。

だが、今年は例年とは違った反応を示した。

滞在する部屋を案内する道の途中で、夏油さんの足が止まった。どうしたのかと視線を送ると、


「やっぱり、悟から動かないとどうにもならないと思うんだよね、私は」


一瞬だけ困ったような表情を浮かべた後、にっこりと笑み、夏油さんが私を見た。


「貴女 も 悟のことが好きだろう?」


何を言うかと思えば。

見透かしたような、その視線と聞き方が気に食わない。私が目だけ動かし、夏油さんを見据える。

そんな一言で動揺すると思われたのであれば、随分となめられたものだ。

第一、側仕えが主を「嫌い」と言えるだろうか。どう考えても、ずるい問いだ。


「甘い物で簡単に釣れる部分は好きですね」


扱いやすくて助かります、と頷いて肯定してやれば、彼は「そう出るか」と、眉を上げて驚いたような顔をするが、それもまたわざとらしくて煩わしい。


「ちなみに、悟の嫌いなところは?」

「いつまでも甘ったれなところですね」


興味津々で彼から問われ、溜まった普段の不満から、自分らしくない本音が口をついて出てしまった。

でも、それでいい。このような手合いは、こちらが頑なに手の内を見せないと分かると、面白がって何度でも仕掛けてくる。

何を考えているのか、チラリと心の内を少々見せておいた方が後々面倒くさくない。

当主になって何年も経つので、そろそろ何事も割り切って五条家の主として覚悟を決めて欲しい……と、私なりの希望を呟くと、「いいね」と夏油さんは笑った。



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