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【呪術廻戦】御当主様は褒められたい【R18】

第2章 年末の男【五条視点】



「傑……からかうのはいい加減に……」

「私は確信したけどね」


ゆめとどんなやり取りしたんだ。

会話の内容を聞いても、含み笑いを洩らす傑からは秘密だと言われてしまった。

コイツの恋愛センサーは馬鹿に出来ないところがある。人の感情の機微に敏感だ。

細かいところに気配りが効くので、高専時代も傑の方がモテていた。


――ゆめに好きな人がいる。


その言葉に胸がザワザワと落ち着かなくなる。


「悟もさ、いい加減に腹を決めたらいいじゃないか」


年齢的に後継ぎを周りからせっつかれるだろう、と。

ごく当たり前の指摘が親友から飛ぶ。

子供の時から、周りから求められる通りにやってきた。それこそ五条家のために時間を犠牲にしてきた。五条家と連なる家門は多い。

当主として、それを背負っていかねばならない。

現に、僕への見合いの話はひっきりなしに来ている。仕事が忙しいからと断り続けるのも限界が近づいている。


「初恋をこじらせるとか、冗談にもならない年齢だ」


親友だからこそ、僕に言える台詞だと思う。

そんなに親しくない奴に言われたら、こちらの事情も知らないでと怒り、確実に半殺しにするだろう。

難しい顔をしていたのだろうか。眉間に皺が寄っていると、苦笑した傑から指摘を受ける。


「まぁ……ミラクルが起きて、夢野さんが悟を受け入れる可能性もあるだろう?」


好きな男より、安定した生活を選ぶ女もいる。

至極冷静にそう言い放つ現実主義者に頭が痛くなる。事はそう簡単に運ばない。

特にゆめのような腹の底が読めない女の前では。


「そういえば……傑、僕が言うのもなんだけど、そろそろこっちに帰ってくる気はないのか?」


“こっち”とは高専のことである。


「……まだ、自分の中で答えを見つけられていないんだ。悟もこの世から呪いを無くすなんて、馬鹿げていて壮大な理想だと思うか?」

「人間の数だけ呪いがあるからな。でも、オマエが助けたり、幸せにした人の数だけ呪いは減ってると思うよ」


困った人がいれば全国どこへでも馳せ参じる。それが今の夏油傑という男だ。


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