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ドラゴンボール孤独な空の下で

第3章 壊れた幸せ



ザマスは、とても清く真面目な界王だ。これほどに次期界王神として、私の後を継ぐ者として相応しい者は彼以外にはいないだろう。

彼には、界王神になれる素質がある。

彼は灰色で汚れの知らない瞳で、彼の師であるゴワスを見つめ言った。


「ゴワス様、私にもっと正義について、神としての正しい道について教えてください」


界王神界へと招聘してからの彼は、日々鍛錬と正義への問答、神としての務めにより一層努力と共に満身した。だがしかし彼はまだ界王神になるには幼く、優しすぎたのかもしれない。

日々を重ねていくうちに不安が芽生えた。

神の務めの一つに人間の生と死、さらに万物の全てを見守るというものがあり、神は人間の摂理を学び、彼ら人間の作る歴史を見守らねばならない。
宇宙の生態系の破壊や、歴史の改変といった具業を犯せば、破壊神といわれる神がその者を破壊するのだ。
私たち界王神が行うのは、万物の創造と博愛、またそれと成長していくものである。だがザマスが人間と関わり見てきたものは、清き彼に大きな衝撃を与え、少しずつ精神を蝕んでいった。


「ゴワス様、こんな野蛮な人間どもを何故生かしていかなければならないのですか、こんな奴らなど生かしておく必要などありません」
「ザマスよ、それは人間を滅ぼすということか?ならんぞザマス、界王神とは彼らを見守り慈しみ、そして許すということだ」


ザマスの言葉にその不安が確実なものとなる。このままでは彼は確実に破滅する。清くまだ幼い彼は、自分だけが思う偏った正義感に身も心も囚われてしまう。

このままではいけない。ゴワスはザマスにさまざまな修行をかした。
人間界への買い出し、人との手合わせに、人々の助けとなること。だがそれは、ザマスにとって全て逆効果であり、憎しみをより増大させていくばかりであった。
だが私はそれでもザマスを信じている。必ずわかってくれるのだと、必ず私の答えに答えてくれるのだと。
ある日のこと、人間がこの界王神界に落ちてきた。私は勝手ながら後期なのだと思った。もっと人間との距離が、心が近づけば、きっとザマスはわかってくれる。そう思ってしまった。


「ゴワス様、お茶が入りました。どうぞ」


もう彼の入れてくれるお茶には、カップの底が見えない。それが酷く悲しく惨めに思えた。


「……ありがとう。ザマスよ」

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