第6章 二人、同じように
私に好きだと言った人達は、誰も彼もが明らかな欲を見せて来る人達ばっかりで、私自身を見てくれるような人がいなかった。
父の愛人、産みの母は凄く綺麗な人だったらしく、色んな男性に言い寄られる程に魅力的だったと聞いた。
そして、私はその人にそっくりだと。
そんな事言われたところで、嬉しくも何ともない。
だから、可愛いだとか、普通なら喜ぶような言葉ですら、私には何の意味もなくて。
だけど、春千夜の言葉は違って聞こえて。やっぱりこちらの気の持ちようなのだろうか。
目の前で、綺麗な顔が近づく。
冷たく見えるその目が、熱く揺れて私を誘う。
曖昧だった気持ちを、明確な形で言葉にしたら、モヤモヤしていた気持ちが軽くなる。
心の準備もないままなのに、抵抗する気持ちは全くなくて。
「抵抗、しねぇの? マジでヤるけど」
「……うん。正直、未知の世界だから少し怖いけど、興味もあったりする」
経験も知識もない私を相手にして、春千夜は面倒に思わないのだろうか。
完全に上にのし掛かる春千夜の、綺麗に流れる髪が落ちて来て、頬をくすぐった。
それを少し手に取って、唇に持っていく。
「何遊んでんだ。えらく余裕だな」
「余裕なんてないよ。心臓出そう」
鼓動が早くて、変に息苦しい気がしてくる。
そんな私の様子を知ってか知らずか、春千夜は着々と私のシャツのボタンを外し始める。
「ねぇ、こんな黙々と始めるものなの?」
「知らねぇよ。俺だって初めてすんだから」
春千夜は潔癖だと聞いてはいたし、女の子にも興味ないと言っていた気がするから、経験がないのも頷ける。
ただ、今からする事に関しては、支障はないのだろうか。
「春千夜……大丈夫?」
「何がだ」
「潔癖なんだよね? もし難しいなら、無理にしなくても大丈夫だよ?」
私が気遣ったつもりで言った言葉で、春千夜の機嫌が明らかに悪くなる。
私に跨ったまま、自らの上半身の制服を脱ぎ始める。
「お前には、どんだけ言葉で言ったところで、通じねぇんだろうから、じっくり体に教え込んでやるよ。それはもうたっぷりと、な」
ニヤリと笑う春千夜に、背筋がゾッとした。
上の服は素早く剥ぎ取られ、唇は塞がれたままだ。
息をするのにも必死だ。