第6章 血 *R
私の術式は加茂家相伝の術式。
「赤血操術」
相伝の術式なんて聞こえは良いが、私は認知された子供ではない。
所謂"愛人の子"
加茂家で女中として働いていた母は、若くて美人だった事もあり、当主に目をかけられていた。
そんな中の妊娠。
これで産まれた子供が男児だったら母も、私も状況は違っていたかもしれない。
けれど母は非術師。
そして当主と関係を持ち、女児を産んだ事でその後の立場は狭く、同じ女中から酷い仕打ちを受け、のちに精神を病んだ。
母から愛情なんて受けた記憶はなく、物心つく頃には母は既に鬱になっていた。
そして私が10歳の時、母は自殺した。
母が死んだ後、私は術式を持っていたお陰で加茂家を追い出さられる事は無かったけれど、中学を卒業するまでは使用人として働かされた。
1日でも早く加茂家から出たかった私は中学卒業後、呪術高専に入る道を選んだ。
信念や大義なんて大層なものは私にはない。
ただあの家から出れて、衣食住に困らなければ何でも良い、それがたまたま術師だっただけ。
やっと、、やっとここで人生をリスタートさせたのに、、、
可愛い服を着て、美味しいものを食べて、
好きな時に寝て起きれる生活。
後ろ指を指される事もなく、陰湿な嫌がらせも受けない学校生活。
高専に来て、それまでの生活が一変した。
これまでの人生、ずっと我慢していた分、私はタカが外れたように遊びまくった。
合コンをして、お酒を飲んでクラブで朝まで踊りまくる。
空っぽの心を埋めたくて、愛情欲しさに何人もの男と付き合っては身体を許した。
側から見たら頭が悪い尻軽オンナだと思われただろうし、実際その通りだと思う。
でもここ数ヶ月、私の中で何かが変わりつつあった。
産まれて初めて出来た、信頼できる仲間。
硝子、傑、五条、この3人は私の新たな人生の一部だ。
誰一人欠く事は出来ない、唯一無二の大事な存在…。
吐き気がする程嫌だった術師も、あの3人と一緒なら悪くない、とさえ思う。
今更別々の道を歩くなんてもう、考えられない…。