第14章 代償
「・・・そっか、そりゃお疲れ。」
俺にしては珍しく労いの一言を掛け、再び書類に目線を落とした。
するとこれまた珍しく普段あまり喋らない七海が口を開いた。
「ーーー私が言うのも何ですが…五条さん、酷い顔してますよ?」
「おいっ、七海⁈」
「・・・・寝てねーからな。」
不機嫌に眉を寄せ顔を上げると、灰原が慌てたように肘で七海の脇腹をつついた。
けれど七海は表情を変えず、じっと俺を見下ろすと、
「五条さん、一度も病院へ行ってないみたいですね?
何故ですか?眠れない程気になるなら、さんのところへ行ったらいいじゃないですか。」
やけに冷静で分かったような口を利く後輩に苛立ちを覚える。
「お前にはカンケーないだろ?
こっちにはこっちの事情があんだよ。」
「・・・事情、ですか。
その事情というのはこの書類の山の事でしょうか?1枚も手を付けてないように見えますけど?」
「お、おいっ、七海、、」
「つーかお前さ、さっきから何が言いてーんだよ。」
ガンッ
バサバサッ
足で思い切り机を蹴飛ばすと、書類の束が床に散らばった。
灰原が慌てて落ちた書類を拾い集めている横で、全く動じない七海を睨み上げた。
「他人の恋愛に口を挟むのは好きではないですが、さんは五条さん、あなたの事を想ってるんじゃないですか?」
「は⁇何言って、、、」
「医務室で家入さんの治療を受けてる時、一度意識を取り戻したんです。
その時にさんは朦朧とする中、五条さん。あなたの名前を呼んでいましたよ?」