第14章 代償
俺が医務室へと駆け付けた時、そこは騒然としていた。
ベッドの傍で呆然と立ち尽くす七海や灰原を他所に硝子は必死で反転術式を施し、傍らでは歌姫が携帯を手に声を荒げていた。
「救急車はまだですかっ⁈とにかく早く輸血をしないと手遅れになりますっ‼︎」
"輸血"
それはが術師として二度と術式を扱えなくなるということ。
赤血操術は自分の血液を操作する。
自身が造る血ではない血液が大量に混ざればそれは扱えなくなる。
けれど生死を分ける状況でそれを口にする者は誰一人としていなかった。
生きてさえいてくれれば。
ーーーあの場にいる誰もがそう願った。