第9章 星漿体②
『えっ⁈ちょ、、黒井さん⁈』
「・・・黒井?」
「皆さまっ、本当にありがとうございますっ、、、
私の不注意ではるばる沖縄まで来る羽目になってしまった上、理子様の為にここまでして頂いて、、、何とお礼を申し上げたら良いのか、、、」
頭を下げたまま震える声でそう話す黒井さんに、
『黒井さん、お礼なんていいんですよ!
こうして任務と評して私達も沖縄観光して楽しんでるんだし‼︎」
「そもそも黒井が拉致られたお陰で妾は沖縄に来る事が出来たんじゃ。
あそこで何も起こらなかったら今頃高専に閉じ込められていたからの。」
頭を上げた黒井さんの目には涙が溜まっていた。
「・・・理子様、、」
すると理子ちゃんは私と五条と傑、3人に向き直ると、切ないような、今にも泣きそうな笑顔を向けた。
「・・・こんな風に海辺を全速力で走り回ったり、ナマコを頭に乗せたりなんて長く生きていてもそうは出来ない経験じゃ。
同化までの3日間、一緒に居てくれるのがお主らで本当に良かった。」
ーーーーーー泣かないって約束したのに、、、。
鼻の奥がツンと痛み、ぎこちない笑顔を浮かべる理子ちゃんの顔がボヤけていく。
「傑、そーゆー事だから高専と、空港で待機してる七海達に連絡宜しく。」
「私が?・・・まぁ、理子ちゃんに免じて。
ーーー帰るのは明日にしよう。」
「だってよ?良かったな。ガキンチョに。」
五条がわしゃわしゃと私と理子ちゃんの頭を乱暴に混ぜる。
「こらっ、やめんかっ!
も泣きべそかいとらんでやめさせろ!」
『うっ、うぅ〜っ、泣きべそじゃないしっ!
海水が顔にかかっただけだし〜!』
「よしっ‼︎んじゃ誰が1番大きなナマコを生け捕りに出来るか勝負しようぜっ⁈
負けたヤツがソーキそば全員分奢りな?」
「またナマコかぁ⁇人の事を子供扱いする癖にお主の方こそ発想がまるで子供ではないか。」
ヤレヤレと呆れ顔をしつつ、五条の後に続いて海へと足を向ける理子ちゃんを、私は涙を拭いながら見守った。