第9章 星漿体②
散々追いかけ回され、すっかり息が上がったところで、浜辺に居た傑から声が掛かった。
「悟!!そろそろ時間だよ。」
『もーおー⁈⁈』
「お、そんな時間か。」
当初の予定では夕方の便で東京に戻り、そのまま高専へ向かう事になっている。
ーーーけど…
言葉には出さないが、理子ちゃんがしゅん…と寂しそうに俯く姿が目に入った。
その姿に胸がチクリ、と痛む。
同じ事を思ったのか、五条と目が合うと、お互い小さく頷いた。
「傑。戻るのは明日の朝にしよう。」
『うん。それが良いよ!天気も安定してるし?ねっ⁈』
傑は戸惑いつつ、何か思案するように指を顎に当てると、五条の耳元で何か囁いた。
2人が話をしている間、私は理子ちゃんの側へ行くと、ポンと肩に手を置いた。
『そんな顔しなくて大丈夫。高専には明日戻れば良いんだし!
だから今日は目一杯遊ぼ⁇
私、ちゅら海水族館行きたいな〜。』
不安気だった理子ちゃんの顔がパッと明るくなり、コクコクと首を縦に振った。
「・・・妾も‼︎妾はジンベイザメが見たい‼︎
それからソーキそばも食べてみたいっ‼︎」
『ははっ、いいね〜‼︎あとは海ぶどうとゴーヤチャンプル‼︎
あ、でもゴーヤは嫌いだからゴーヤ抜きのやつ‼︎』
「ゴーヤのないゴーヤチャンプルって聞いた事ないぞ?」
だよね〜(笑)と盛り上がる私達の横で、黒井さんが深く頭を下げた。