第3章 陰抓楓乃、死にました
ぼちぼち他愛ない話をしながら歩いていると、あっという間に駅についた。
私と昴は駅の方向が真反対なため、駅につくとすぐにお別れする。
「じゃあ、また明日ね」
そう言い、私は手を離そうとした。
……が。
「……昴?」
昴は一向に手を離そうとせず、寧ろ強く握られた。
具合でも悪いのかと顔色をうかがったが、そういうわけではなさそうだ。
昴は目を伏せ、切羽詰まったような表情をしている。
なんたともいえない色気を醸し出すその顔に胸が高鳴った。
どうしようかと悩んでいると、昴は目をこちらと合わせた。
「今日と明日、うち親いないんだ」
少しだけ低いその声に、息を呑む。
「……泊まってかない?」
縋るような、でもどこか不安そうな顔でそう聞かれると、胸がしめつけられる。
それがどういう事を示すかわからないほど、私は馬鹿でもない。
心臓がドキドキと速く脈打ち、暫し静寂が二人の間に流れる。
私は昴とそういう行為がしたくないわけじゃない。
寧ろしたいくらいだ。
――――でも。